最近の拡張現実(ヘッドマウントディスプレイ:Oculus Rift)
(所要時間:約3分半)
拡張現実,お好きですか? お好きな方にもご存知ない方にも,この記事では私(@tamakiii )が個人的に注目している拡張現実技術(AR技術)のひとつとして,KICKSTARTER出身のヘッドマウントディスプレイ "Oculus Rift(Oculus VR)"を紹介します.
出典:Virtuix Omni and Oculus Rift come together for literal running and gunning
拡張現実(AR)とは?
拡張現実(AR)とは,
Augmented Realityの略。ありのままに知覚される情報に、
デジタル合成などによって作られた情報を付加し、人間の現実認識を強化する技術のこと。
出典:kotobank.jp
近年の有名どころでは,Google Glassや,スマートフォンアプリの「セカイカメラ」,アニメの「電脳コイル」の世界観がそれに当たります.
ARの重要要素とヘッドマウントディスプレイ
「人間の現実認識を強化する技術」とあるように,いわゆる「リアリティ」が重要な要素ですが,視覚的な没入感を与える機器であるはずのヘッドマウントディスプレイは,ちょっと前まで没入感に欠けるものでした.
単純なヘッドマウントディスプレイの構造は,装着時に目の前に小さなディスプレイが配置されるものです.没入感に欠けるのはこの構造のために,「暗い空間の遠い場所に映画館のように画面が浮かんでるだけ」のように見え,体や頭を動かしても見えるものが変わらず,ただ映されたものを見るだけだったからです.
Oculus Rift
こうしたAR用にヘッドマウントディスプレイを使う上での問題を解決すべく生み出されたのが,"Oculus Rift" でした.
出典:egmnow.com
Oculus RiftはもともとKICKSTARTER のプロジェクトとして始まり,初期の目標金額25万ドルをあっと言う間に調達し,最終的に243万ドルを調達,最近になって米スパーク・キャピタル社と米マトリックス・パートナーズ社から,1,600万ドルを調達しています.実はまだ開発者向けの初期版が販売されているだけで,一般向けのデバイスではありませんが,かなり注目されている存在と言えます.
参照:VRヘッドセット「Oculus Rift」、さらに1,600万ドル超を調達 « WIRED.jp
参照:Oculus Rift: Step Into the Game by Oculus — Kickstarter
Oculus Riftの特徴
Oculus Riftの特徴はその高い没入感で,特に下記の2つが特徴です.
- 両眼視差方式(視差バリア方式ではない/これに似てますね)
- 加速度センサー付き(頭を動かすと画面が追随する)
両眼視差方式は,単純に左右のディスプレイに視点の少しズレた映像をそれぞれ映し出す方式なので,次の動画のように映像を特殊処理するだけでOculus Rift用の立体映像が作れます.
魅力が伝わり難い
"Nintendo 3DS"と同じく,なかなか実機がないと伝わり難い魅力ですが,今まで感じたことのない没入感・リアリティに驚きます.実際に使ってみている人の映像なら,少しは伝わるかもしれません.
ホラーゲームを遊ぶ人のリアクション Oculus Rift Horror Game -- Alone in the Rift, Intense Reaction
こちらはインタビューそっちのけで遊ぶインタビュワー Top Shelf - Day 2 - Oculus Rift!
Ibex
Oculus Riftは元々ゲーム用に開発されたデバイスですが,映像加工してHDMIやDVIなどで接続すれば使えるので,ゲーム以外でもYoutubeにOculus Rift用動画が投稿されたり,Oculus Rift用のアプリケーションが開発されたりしています.
【接続部】出典:www.pcauthority.com.au
特にお勧めのアプリケーションが"Ibex"という仮想デスクトップアプリです.このアプリでは普段使っているPCを仮想空間上で使えます.初体験の用途としてもお勧めです.
対応アプリケーション・ゲーム
Oculus Rift対応アプリケーション・ゲームは下記のページにまとめられています. まだ対応することが発表されただけでリリースされていないものもありますが,minecraftや0x10c,Assassins Creed,Call of Duty,Google Mapsなど,有名どころの名がいくつも挙がっています.
RiftEnabled™ – Oculus Rift enabled list of games & demos
開発
Oculus Rift用アプリケーションの開発用にはSDKが用意されており,UnityやUnreal Engineを使ってOculus Rift対応ゲームを開発することができます.勿論,C++を使ったネイティブアプリも開発可能な上,JavaScriptを使って対応ソフトを開発することもできます(three.js). ただ,JavaScriptを使ったソフトをいくつか使ってみたところ,処理速度に多少違和感があり,快適とは言い難かったことから,ウェブ特有の何かを作るとき以外は,素直にネイティブアプリを作ることを優先的に選択した方が良さそうです.
所感
私の場合,2012年の12月中頃に注文して,2013年の6月の末ごろに届きました.KICKSTARTERでの応募は2012年の8〜9月だったので遅い組でした.よくKICKSTARTERは予定が遅れると言われますが,それを知っていても6ヶ月はかなりやきもきしました.
頭の動きに対するレスポンスはかなり良く,欲を言えばもう少しという所ですが,ほぼ完璧に近い気がしています.重量もさほどなく,長時間使用しても首や頭はさほど疲れません.
問題は3D酔いで,頭の動きに追従しない,高速で動く動画を見ると高確率で酔います.多少慣れはありますが,ヘッドトラッキングなしで使うのはかなり厳しいかと思います.
また画質については,Ibexを使ったときはあまり気になりませんでしたが,動画やゲームなどの動きのある画を見る際には,画面が狭く感じられたり,画面のドットが見えるのが気になりました.
周囲に持っている人がいなかったので,せっかくだしと社内で体験会を開いてみました.そのときの感想としては
- バーチャルボーイみたい
- 画面の中にいるみたい
- 酔う
- 人間だめになりそう
といった声が多かったです.私の説明が悪かったのかもしれないですが,割と「これで何ができるのか」が伝わっていなかったような気がしています.
(実は,本来はこんな真面目な紹介記事ではなく,ヘッドマウントディスプレイを人をダメにするソファと共に使ったらどれだけ人がダメになるか,という記事を書こうとしてましたが,金銭的理由から断念しました.)
最後に
2〜3年ほど前は拡張現実研究の実用化が盛んでしたが,ここ1〜2年ほどあまりそういった情報を聞かなくなり,個人的にも拡張現実のことは忘れかけていました.しかしOculus Riftを使ってみて,まだまだ拡張現実の世界には先があると期待を持ちました.それこそ,ロボット開発やバイオ産業技術などと並んだ基幹技術になる予感さえしています.
(笑)をつけてネタにされ続けてきたSecond Lifeが,もう一花咲かせる日も遠くないかもしれません.
Oculus Riftはコンシューマ版の開発を開始・発表しており(1080p対応,フロントカメラ付き!),今後も目が離せない存在です.これを期に拡張現実の世界を覗き込んでみてはいかがでしょうか?